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[020]2026.06.08log

詰まったもの。ほどいたもの。残していくもの。

威勢のいい声を捨てて、自分の声を見つけるまで

しばらく私のスローガンはこれだった。

"Build it. Ship it. No drama." つくって、届けて、つまずかない。

悪くなかった。リズムがあり、威勢がよく、インディーハッカー特有の自信がにじんでいた。三つの短い命令文がタンタンタンと続く感じ。最初にこのスローガンを決めたときは気に入っていた。

ところが時が経つにつれ、少しずつ違和感が出てきた。口になじまない服を着ている感じ。

問題を正確に突き止めるのは難しかった。スローガン自体はうまくできていたから。しかしこの声が自分の声ではないという感覚が次第に大きくなった。「No drama」と威勢よく叫ぶ人。それは私ではなかった。

私は静かな人間だ。夜に一人で作業し、自己PRが苦手で、前に出るのを好まない。「つまずかない」と叫ぶには、実のところ私は毎日つまずいていた。このエッセイシリーズ自体がつまずきの記録ではないか。npmのタイプミスに一日(EP.04)、トグル一つに二晩(EP.05)、白紙の本に七度の修理(EP.14)。なのにスローガンは「つまずかずにさっさとやり遂げる」と言っていた。スローガンと実際の私の間に隙間があった。

ブランド全体——unstackd.io——のアイデンティティを考え直すことにした。

これはEP.07ですでに一度扱った悩みの延長だった。あのとき私は「7つのサービスを発表するプラットフォーム」ではなく「作ったものが一つずつ積み重なる作業場」に方向を定めた。静かな蓄積。大きな声ではなく低い声。ところがスローガンだけがまだ昔の方向にとどまっていた。静かな作業場に "Build it. Ship it. No drama." はうるさすぎた。

新しいスローガンを見つけるため、管制塔に静かに自分の仕事をするクリエイターたちを調査してほしいと頼んだ。70人以上。クレイグ・モッド、ロビン・スローン、グウェン、アンディ・マトゥシャック、そして韓国の静かなソロ起業家たちまで。彼らが自分自身をどう紹介するか、どんなタグラインを使うか。

調査から一つのパターンが見えた。最も記憶に残る個人ブランドの言葉は、誰かにピッチするのではなく、独り言のように聞こえた。短い平叙文。パワー動詞ではなく平凡な名詞。「あなたの人生を変えます」といった変換の約束への、ほとんどアレルギー的な回避。

一人で働く人が、誰にもパフォーマンスを強いられないとき、自分自身をどう呼ぶか。それは静かだった。淡々としていた。誇らなかった。

このトーンを参考に、元のスローガンの「三拍子」構造は保ちつつ、中身を完全に変えた。威勢のいい命令文から、淡々とした名詞句へ。

詰まったもの。ほどいたもの。残していくもの。

韓国語では: 막힌 것들. 풀어낸 것들. 여기 남겨둔 것들.

英語では: Stuck things. unstackd. Left here.

詰まったもの——生きていてぶつかる問題たち。ほどいたもの——そのうち私がほどいてみたもの。残していくもの——その過程をこの空間に記録として残す。ツールであれ、文であれ、本であれ。

このスローガンには「あなたを変えます」がない。「つまずかない」という虚勢もない。ただ「私は詰まったものをほどいてみて、その跡をここに残す」という淡々とした叙述だ。

第三の句で小さな選択があった。「残していくもの」(残しつつ進んでいく、継続する)と「置いていくもの」(置いて去る)の間で。私は前者を選んだ。去るのではなく、残し続けること。この作業場は終わる場所ではなく積み重なり続ける場所だから。EP.10で学んだこと——翻訳ではなくローカライゼーション——がここでも作動した。「残していく」と「置いていく」は辞書では似て見えるが、日本語話者にはまったく違う温度を持つ。

スローガン一つを変えるのにこんなに長い話が必要かとも思う。しかしスローガンは単語いくつかではなかった。それは「私が私をどう見るか」の問題だった。威勢のいい起業家として見るか、静かな記録者として見るか。スローガンを変えるとは、自己認識を変えることだった。

振り返れば、このシリーズ全体がそういう話だった。

コードを読めない人がサービスを作った。しかし学んだのはコーディングではなかった。問題を分解する方法(EP.02)、エラーをヒントとして読む方法(EP.04、EP.05)、構造を読む言語(EP.06)、AIにコンテキストを与える方法(EP.08)、そしてAIをいつ使ってはいけないか(EP.10)。作り方を学んだ後には作らない方法を学び(EP.13)、失敗を感知する方法を学び(EP.16)、大きな声を出そうとして自分の声を見つけた。

シリーズのタイトルは「読めない言語で建てる家」だ。最初はコードという読めない言語で家を建てる話だと思っていた。しかし終わりに来てみると、その家はコードだけで建てられたのではなかった。判断で、節制で、そして自分の声を見つけることで建てられた。

読めない言語でも家は建てられる。ただし、その家に誰が住むのかは自分が知っていなければならない。そしてその家に何と表札を掛けるのかも。

詰まったもの。ほどいたもの。残していくもの。

このシリーズも、そうやってここに残していくものの一つだ。


🔧 このエピソードの技術用語解説

スローガン / タグライン(Tagline) ブランドやサービスのアイデンティティを一文に圧縮したもの。ユーザーがサービスに初めて出会ったときに受ける印象を決める。技術ではなくアイデンティティの問題なので、作ることより「自分が誰か」を知ることが先だ。

ブランドアイデンティティ(Brand Identity) ブランドが人々にどう認識されたいかの総体。スローガン、色、トーン、ロゴ、そして何を言い何を言わないかまで含む。

ビルド・イン・パブリック(Build in Public) 製品を作る過程を公開的に記録し共有する方式。完成した結果だけを見せるのではなく、つまずきや失敗まで見せる。このエッセイシリーズ自体がビルド・イン・パブリックの一形態だ。

ポジショニング(Positioning) 市場で自分をどの位置に置くか。「複数のサービスを売るプラットフォーム」と「作ったものが積み重なる作業場」は、同じ実体への異なるポジショニングだ。

アーカイブ(Archive) 積み重ねて保存する記録の保管庫。unstackd.ioを「販売プラットフォーム」ではなく「アーカイブ作業場」として再定義したことが、このシリーズ全体を貫くアイデンティティだ。